《連載:防災いばらき 未来へつなぐ 3.11震災15年》第2部(6) シイタケ 苦境色濃く 原木調達支援も道半ば
ハウス内には全国から仕入れた原木にシイタケが育っていた。茨城県つくば市中野の「なかのきのこ園」。2011年3月、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故が発生し、苦境に立たされた農家の一つだ。栽培に必要な原木の9割は福島県の阿武隈地域から購入していたが、事故による放射性物質の影響で、同地域産は姿を消した。社長の飯泉厚彦さん(47)は「品質が良く、木が真っすぐで栽培に適していた」と懐かしむ。事故から15年。県内の生産者は激減し、影響は色濃く残る。
茨城県に隣接する福島県はかつて原木の一大産地だった。同県によると、事故前の年間出荷量は約370万本で半数以上を県外に提供していた。だが原発事故により、出荷停止が続く。24年の出荷量はわずか約4万6000本。産地の面影はなくなった。
これに伴い同農園の仕入れ先も一変した。今では北海道、栃木、長野などで育った原木に植菌して栽培している。事故後は生産を再開したくても原木が手に入りにくかった。事故前の利用量は年間22万5000本あったが、事故後は13万5000本まで落ち込んだ。
飯泉さんは必要な量を調達しようと各地の業者を回って交渉した。そのかいあって25年春には23万本を確保。「14年かけて、初めて事故前を上回る本数をそろえられた」と振り返る。
「調達の壁」は乗り越えたものの課題はある。原木シイタケは寒い冬に植菌するが、複数の産地から原木を購入するため、適した時期に作業ができない。菌は暑さに弱いため、4月中旬までずれ込むと、栽培管理に苦労する。
原発事故で拡散された放射性物質により、福島県ばかりでなく茨城県の農家も出荷停止や休業を余儀なくされた。高齢化もあり、生産できなくなった農家は次々と辞めていったという。
茨城県によると、2010年に220戸あったシイタケ農家は24年、4分の1の52戸まで減った。「(原木を自前で切り出す)自伐で生産していた人は一気に辞めていった」(飯泉さん)。
かつて県内で生産量トップを誇ったJAやさと椎茸部会。自伐で栽培していたが、今は生産する人自体がいない。同県石岡市八郷地域の山林は原木のクヌギやコナラが多いが、原木を切り出す伐採サイクルも崩れた。大木になり、病気のナラ枯れも発生している。部会長だった広瀬憲一さん(72)は「原木が取れる環境とは程遠い。もう戻れない」と声を落とす。
今でも県内の原木から基準値を超える放射性物質が検出されることがある。県は、基準値以上のコナラなどを年間約5ヘクタールずつ伐採し更新を促す。切り株から萌芽(ほうが)が育つが、栽培に利用できるよう農家を支援する。他県産の原木を調達する費用も補助している。
萌芽が原木として使えるよう成長するまで15~20年はかかる。県林政課の担当者は「長い目で見る必要がある。道のりはまだ遠い」と語る。
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