《連載:防災いばらき 未来へつなぐ 3.11震災15年》第2部(5) 生活守る橋 耐震補強 進捗86%、全国を上回る
「崩落は仕事先から自宅に戻った後に知った。帰るルートや時間によっては、落ちたのは自分だったかもしれない」
鉾田と行方の両市を結ぶ鹿行大橋は北浦で最も北に架かる。全長415メートルの現在の橋は2012年4月に供用開始された。「震災当時の橋はすぐ南側にあった」。仕事と生活の両面で頻繁に使っていた鉾田市飯島、保険代理店業、日向寺護さん(48)は語る。
旧鹿行大橋は1968年開通。新橋への架け替え工事が進められていたさなか、東日本大震災で崩落した。設計を超える揺れによって水中のくいの溶接部が破断。橋脚が倒れて橋桁が長さ58メートルにわたって落ち、乗用車で走行中の男性が巻き込まれて亡くなった。
日向寺さんには当時、対岸の顧客から被災住宅の損害調査依頼が相次いだ。だが、鹿行大橋を回り道して対岸に行くには通常10分が40分から1時間ほどかかった。「1本の橋の有無でこんなに違うのか。当たり前にあった橋のありがたさを感じた」と振り返る。
通勤通学から物流、救急搬送まで、崩落による地域への影響は、新橋が開通するまで約1年に及んだ。橋を含む国道354号は、災害時に緊急輸送や防災拠点間を相互に連絡する「緊急輸送道路」に指定されていた。
県内で震災の被害を受けた県管理の橋梁(きょうりょう)は、鹿行大橋を含め計42カ所。橋桁上の路面やつなぎ目の損傷などが、避難経路の確保や応急復旧に必要な物資輸送を妨げた。
県は「多くの橋梁に耐震機能が備わってなかった」として、12年に「復興みちづくりアクションプラン」を策定。その後も「緊急輸送道路ネットワーク計画」を2回改定し、旧耐震基準で整備された橋梁の耐震化を計画的に進めた。
橋桁には落橋防止装置を設置し、橋脚の周りは鉄筋コンクリートを巻き付け強度を高めた。県道路維持課によると、耐震補強の対象となった県管理の橋梁は533カ所。このうち461カ所が補強を終えた。進捗(しんちょく)率は2月時点で86.5%となり、全国平均82%を上回っている。
県は残る13.5%の72カ所も順次、補強事業に着手。坂東市と千葉県野田市を結ぶ芽吹大橋(536メートル)は27年度に、大洗町の大洗袖ケ浦橋(185メートル)は29年度に、それぞれ完成する予定だ。
橋の耐震工事は橋下の河川や道路、線路への影響や地質などによって工期や経費が変わる。耐震対策の完成には1年間に1~2橋のペースで進めるのが限界だ。このため、県は優先度が高い橋梁を見極め、着手の順番を決めて計画を策定している。
同課の担当者は「防災上重要な施設に緊急物資や人員を迅速に移動させるためには、道路ネットワークの構築が極めて重要」と話す。早期の耐震化を実現するためにも「一カ所一カ所を着実に進めていく」としている。
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