《旬もの》イチゴ(茨城・常陸大宮市)
■完熟で収穫、甘みたっぷり
クリスマスシーズンを迎える直前、茨城県常陸大宮市の「つづく農園」ハウス内には葉元まで赤々としたイチゴがたわわに実る。那珂川の清流と山がつくる景観にほれ込み、都竹大輔さん(51)、友美さん(45)夫妻が同市の旧御前山地区で新規就農したのは2007年だった。
「田舎暮らしは夫婦で話し合っていて、ここに住むなら(仕事は)農業かなと」と都竹さん。イチゴ栽培に至ったのは「ベリー類の観光農園を考えていたが、初収穫まで3、4年かかる。初年から収穫できるイチゴはどうかと助言され-」と振り返る。
32歳で脱サラ。一家4人で移り住み「安心して食べられるイチゴ」を目指して「最初の数年間は無我夢中」で取り組んだ。今ではイチゴ専業で年間20~25トンを生産する。ほとんどを同農園で直売し、自動販売機でも買えるようにしたのは「この土、この気候が育んだイチゴをここで味わってほしいから」とよどみない。
優秀な生産者を表彰する「茨城いちごグランプリ」を2度受賞した同園のイチゴは甘みと酸味のバランスが良く、収穫は完熟してから。人の手がイチゴに触れるのも収穫時と選別時だけ。同市と大子町の生産者で「奥久慈いちご研究会」をつくり、研究と情報交換にも余念がない。
言うまでもなく農業で大事なのは土や水、気候条件。都竹さんは農作物に良い微生物がたくさん存在し、有機物が豊富な同所の土壌は農業に最適と判断。寒暖差が大きい内陸性の気候が生産物のうま味を凝縮することも知った。微生物の多様性や活性度合いを調べる土壌検査も欠かさない。
さらに「イチゴは水で育てる」と言われるほど、水も重要な要素。同農園で使う地下水は保健所の検査を受け、飲料水にもできる水準。冬期はこの水をビニールハウスの二重構造部分内に噴霧し、ハウス内の気温を一定に保つ。
昆虫の力も活用する。受粉はハウス内にミツバチを放つ。害虫駆除には「天敵昆虫」を使う。妻の友美さんは「うちのイチゴは摘んでそのまま食べられるほど安全。2人の子が小さい頃はよく、取っては口に放り込んでいました」と笑って話した。
■メモ イチゴ・つづく農園
▽住所は常陸大宮市野口2563の1
▽(電)、ファクス0295(55)3040/午前10時~午後5時。不定休。
▽イチゴ狩りは予約制で営業時間内に電話で申し込む。水、土、日曜日の3日間。販売品種は、いばらキッス、とちおとめ、ひたちひめ、白いイチゴ、ルビードロップ
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