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《旬もの》イセエビ(茨城・日立市)

刺し網漁で捕らえたイセエビを網から外す小沢勝治さん(右手前)=日立市久慈町
刺し網漁で捕らえたイセエビを網から外す小沢勝治さん(右手前)=日立市久慈町
生きのいいイセエビを出荷
生きのいいイセエビを出荷
漁を終え帰港する小沢さんの漁船
漁を終え帰港する小沢さんの漁船


■大ぶりの「茨城ブランド」

茨城県日立市の久慈漁港。岸壁の一画ではゴムかっぱ、ゴム長靴の4人が、大型バケツやいけすに海水を満たし、漁船の帰りを待っていた。辺りが明るみ日が差したころ、船のエンジン音が聞こえてきた。

同港久慈浜丸小漁協所属の小沢勝治さん(55)の小型船、第三勝栄丸が防波堤の陰から現れ、ゆっくりと接岸した。前日午後に仕掛けた刺し網を、早朝に引き揚げてきたのだ。漁網の中にイセエビが見える。「せーのっ」でイセエビごと網を揚げ、次々に大型カゴに入れ込んで行く。

「時間との勝負だから」と小沢さん。全員で柄の付いた金属のかぎ棒「エビカギ」を手に、網に絡まったイセエビを丁寧に、しかし手早く外す。「こっちいっぱい、バケツバケツ」「雌は分けといて」。短いやりとりが飛び交い、あうんの呼吸で作業が進む。

それまでおとなしかったイセエビが、海水を満たしたバケツに放り込まれると、水を得てバシャバシャと勢いよく跳ねた。バケツがいっぱいになると、海水流しっ放しの大型いけすにザザーッと流し入れ、エビ同士重ならないよう散らす。

作業の合間、近年の漁獲増に話を振ると「60年前から捕れてたぞ」と手伝いの古老。小沢さんは「そんな前から? 初めて聞いたそれ」と驚きつつ、手は休まず動く。

1時間ほどで作業は一段落した。小沢さんは「エビは計量して卸業者が買い取ってくれる。今日はいい方」とまんざらでもなさそうだ。後日の計量では113キロだった。

刺し網漁は「刺し網」を夜行性のイセエビが潜む岩場などに狙いを定めて仕掛け、夜、餌を求めて動き回るところを引っかけたり絡め取ったりする漁法。漁場に精通し、経験を要する漁だ。

小沢さんは「マグロ、サワラ漁をし、素潜りでアワビも捕ってきた経験が役立っている。茨城のイセエビが知られ、消費拡大につながれば」と期待を込めた。

茨城沖のイセエビは他県産に比べて大ぶりといわれる。県は「常陸乃国いせ海老」として600グラム以上をスタンダード、1キロ以上をプレミアムと定めてブランド化。それ以外も含めて市場での認知度アップを図り、首都圏に売り込んでいる。

■メモ イセエビ
県によると、県産イセエビの2012年漁獲量は6トンで全国17位だったが、21年は58トンで6位に上昇した。全国では同年、1位だった三重県を千葉県が抜き、トップに。「常陸乃国いせ海老」取扱店は同ブランドサイトhttps://ibaraki-iseebi.com/で。



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