《旬もの》梨 恵水(茨城・八千代町)
■深い甘み、みずみずしく
茨城県は梨の生産量で千葉県に次いで全国2位(2022年農水省果樹生産出荷統計)を誇る。なり物の常として、うまみや甘みを凝縮してくれるのは恵まれた水と土壌、そして昼夜の寒暖差だ。茨城県内では、県西・県南地域が主力産地となっている。
7月の幸水を皮切りに、下妻甘熟梨、県オリジナル品種の恵水(けいすい)、豊水、あきづき、新高(にいたか)、にっこりなど、さまざまな品種が10月ごろまで味わえる。中でも同県八千代町は江戸時代から梨栽培の歴史があり、日本で最も古い梨産地の一つといわれている。
県梨組合連合会会長の草間勝美さん(72)は同町内6カ所207アールの樹園地を持つ梨農家の3代目。県産ブランド梨の代表格、恵水の開発には試験栽培から携わり、現在も栽培中だ。
恵水は苗木から4年目で大玉がなり、平均で600グラム前後、大きな物は1キロにもなる。糖度は驚きの13度。酸味が少なく、深い甘みが特長だ。高級感ある赤めの表皮、シャリシャリとしてみずみずしい食感は、まさにブランド梨を名乗るにふさわしい。従来品種に比べ生産量はまだ少ないが、年々出荷量が増えており、認知度向上のため都内の果実専門店や県アンテナショップでも販売する。
「近所には江戸時代からという梨農家もあった。茨城の梨のおいしさはどこにも負けない」という草間さんの言葉に自信がのぞく。
今年の出来はどうですか-と問うと「糖度は十分だが、例年に比べやや小ぶりかもしれない。ここ2年続きの高温で、黒シミが出てしまうのが心配」とのこと。とはいえ「恵水は県産梨の旗印。商品単価の高い梨は生産農家の未来につながる」と見据えて栽培に取り組む。
草間さんは作業の省力化を図れる新しい栽培法「樹体ジョイント仕立て」にも挑戦中だ。一列に植えた苗木の主枝を水平に曲げ、隣の木とつなぎ(ジョイント)、さらに主枝から直角水平に実のなる側枝を伸ばす。4年目で収穫でき、管理、収穫作業の単純化、省力化が図れる。
「それもこれも茨城のおいしい梨をたくさんの方にぜひ食べてほしいから」と草間さんは熱く語る。
■メモ 梨 恵水
▽品種ごとのシーズンは豊水~9月中旬、恵水9月上旬~同下旬、あきづき9月中旬~10月上旬など。恵水は間もなく終盤、問い合わせは、JA常総ひかり下妻梨直売所(電)0296(44)6035(午前9時~午後3時)
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