《旬もの》ピンクレディー(茨城・大子町)
■シャクシャク食感リンゴ
昭和の女性アイドルデュオを思い出す名称だが、こちらは「・」がない。茨城県大子町下野宮のリンゴ農家、岡田修さん(63)の樹園地には12月初旬に収穫が始まった「ピンクレディー」がたわわに実る。日本の代表品種「ふじ」に比べるとやや小さいものの、日を浴びて赤々と輝くリンゴは青空に映えて見るからにおいしそうだ。
「香りも良く、程よい酸味と甘みのバランスがよい。シャクシャクとした硬めの歯応え、食感が5月ごろまで味わえる」と岡田さんは鈴なりのリンゴをまぶしそうに見上げた。
実を手に取ると、なるほど果肉が硬く締まって、指先にでこぼこ感が伝わる。「こうすると硬さが分かりますよ」と岡田さんが実を指先ではじくと「カンカン」と金属的な響きがした。
原産は豪州西オーストラリア州。品種名は生みの親の名前からとって「クリップス・ピンク」だが、「ピンクレディー」として豪州、北米、ニュージーランド、イタリア、フランス、チリ、南アフリカなどで栽培されている。欧州では濃厚な味わいからアップルパイやタルトなどの材料としても人気だ。
栽培に関する権利は豪州の組織が管理し、日本では長野県の日本ピンクレディー協会を通して各生産者が契約を結び、苗木生産と商標使用料を支払って栽培する。北海道、青森、山形、群馬の各県で栽培され、茨城では岡田さんを含む大子町内の3園のみだ。
生産者が少ないことを岡田さんは「市場出荷がメインならば使用料を払ってまでは(作らない)、ということでしょう」と推し量る。一方「保存性がよく出荷期間が長い、旬が他と重ならない、味と見栄えもいい」とメリットも強調。大玉で蜜が入って甘さが勝る品種が多い昨今、「逆にこちらを選ぶ人も増えてきた」とも。
岡田さんにはもう一つ理由がある。近年、温暖化の影響で実が色づかなかったり、軟らかすぎたりしてリンゴ栽培は難しくなっているという。「暑さに強く、手間がかからないピンクレディーは生き残る可能性が高い。品種構成を見直す曲がり角に来ていると感じます」と思案顔だ。
■メモ■
ピンクレディー▽県内で栽培するのは茨城県大子町内の3園。
▽岡田りんご園
(電)0295(72)4661 大子町下野宮1615
▽黒田りんご園
(電)0295(76)0327 大子町小生瀬4445
▽豊田りんご園
(電)0295(76)0858 大子町小生瀬3964
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