《旬もの》千石きゅうり(茨城・常総市)



■種から育成、心地よい食感
初夏を思わせる陽気に茨城県常総市岡田の農業、中山初夫さん(61)のハウス内は汗がしたたる暑さ。林立する茎に緑の葉が茂り、光沢のある濃緑色のキュウリが真っすぐに実る。柔らかい皮と、みずみずしく心地よい食感で知られる「千石きゅうり」だ。
同県の旧千代川村(現下妻市)と旧石下町(現常総市)周辺で作られており、名前は産地の頭文字から。県の銘柄産地にも指定されている。
20代で就農した中山さんは「父はメロンを作っていたが、市場での認知度は低かった。近隣にキュウリの生産者が多かったこともあって切り替えた」と話す。
中山さんは種からキュウリを育てる。キュウリと台木になるカボチャの種をポットにまき、発芽した両方の苗木をクリップで「接木(せつぼく)」。キュウリの根とカボチャの芯は切ってしまう。こうすることで、キュウリはカボチャの根で育つ。
「カボチャの根はキュウリより量が多く太く強い茎に育つ。連作障害や病気にも強い。皆やっていること」。中山さんは事もなげに解説する。感心されるほどのことでもない、常識-といった表情だ。
一方で、接ぎ木は手間も時間もかかる上、技術も必要。その後の養生管理も大変だ。このため、千石胡瓜(きゅうり)生産出荷協議会(24人)でも種から育てるのは中山さんを含め3、4軒という。
中山さんが丹精を込めるのは、千石きゅうりの優良規格「A品」率が90%を超えるからでもあるが、買った苗木は際限なく育ち過ぎたり、実の形が悪かったりして「うちの畑では暴れるから」と説明する。
収穫は1本ずつ見極めて選果し、等級ごとに選別。箱詰めを行い、JAの集荷所に搬入する。高品質なキュウリの生産に向け、土づくり、栽培技術の追求はもちろん産地として規格、品質が統一されるよう定期的に生産者同士がが集まり、品質、規格の確認を欠かさない。
生でも調理してもおいしいキュウリだが、記者が最近うまいと感じたのはサンドイッチ。夏の初めのキューカンバーサンドイッチ-と気取れば、片岡義男の小説に出てきそうではないか。
■メモ 千石きゅうり
▽JA常総ひかりやすらぎの里しもつま農産物千代川直売所で販売。
▽住所は茨城県下妻市大園木2697
▽営業時間:4~10月 午前9時~午後6時半。11~3月 午前9時~午後6時。第1、3水曜定休。
▽問い合わせは同直売所(電)0296(30)7660
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