《旬もの》チョウザメ(茨城・桜川市)
■高級食材、魅力広め食卓に
チョウザメといえば、キャビアが世界三大珍味の一つとして珍重されている。海外では肉も高級食材として流通しており、実は茨城県内でも養殖が行われている。桜川市真壁町の養殖場を訪ねると、廃校プールを改造したいけすにはチョウザメ約500匹が活発に泳いでいた。
背中のチョウのような形のうろこから、この名が付いたらしいがサメの仲間ではない。淡水や、淡水と海水が混ざる汽水域に生息し、2億年前の化石も見つかっている古代魚でもある。
養殖事業を切り回すのは「つくばチョウザメ産業」の取締役、白田正男さん(66)。卵をほぐしたキャビアやチョウザメ料理を自ら運営する古民家レストラン「スタージョン」で提供しつつ、魚肉の販路開拓も図るなど、チョウザメビジネスに取り組む。
建築業だった白田さんがチョウザメ養殖に関わったのは2010年。「魚に興味はなかった。釣りをしたこともなかった」が、旧知の事業者の熱心な誘いに応じて数人で資金を出し合って会社を設立。つくば市内の畑地のビニールハウス内に水槽を造り、養殖事業に乗り出した。
チョウザメは成魚になり抱卵するまで7年かかる。この間「漏電で水槽に酸素を供給できず、200匹近くを一度に失ったこともあった」と苦い経験を語る。「今思えば稚魚から成魚に育て、魚肉やキャビアの出荷まで、試行錯誤しながら一連のサイクルを確立できたことがよかった」と振り返る。
白身の肉は癖がなく淡泊な味わいで歯応えはしっかり。白田さんは「良質なタンパク質が多い。グルタミン酸やアスパラギン酸はアジの2倍近い」と特長を解説する。
20年にはレストランを開き、魚肉の燻製(くんせい)、干し肉なども販売している。県が旗を振る新ブランド「霞ケ浦キャビア」の販路拡大にも携わる。チョウザメの排せつ物が混じった水をろ過して再利用するバジルやコマツナの水耕栽培も始めた。
ここ数年は新型コロナ禍でホテルや結婚式場などの需要も先細った。回復傾向にはあるが「飲食店やホテルなどへのスポット的な需要がまだ多い。チョウザメのおいしさや魅力を売り込んで認知度を上げ、食卓に上るようになれば」と消費拡大に意欲的だ。
■メモ■
チョウザメ料理、加工品の販売▽「レストキャビン古民家 スタージョン」桜川市真壁町田44(電)080(2102)2501、午前11時半~午後4時(月、火曜定休)
▽「和伊和伊ダイニング酒趣」水戸市城南1の5の16第二吉住ビル1F(電)029(302)1103
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