《旬もの》食用ホオズキ(茨城・高萩市)



■甘い香り、甘酸っぱさ絶妙
ホオズキといえば浅草寺のほおずき市がつとに有名だ。真っ赤に熟した観賞用のそれを、夏の風物詩として思い浮かべる人も多いだろう。
しかし茨城県高萩市では食べるホオズキが特産品として栽培され定着している。一見するとミニトマトのように見える果実は、甘い香りと甘酸っぱさのバランスが絶妙で、他に例えられない食味と相まって、県内でも徐々に認知度が上がっている。
同市上君田の笹川雄也さん(46)、妻の美奈さん(45)は有機農業を追求しながら、「結農実(ゆのみ)ワークス」として2017年から食用ホオズキを栽培している。
標高約500メートルの山間部にある畑とハウスでは、種から育てたオリジナルブランド「高萩ほおずき」が約1.5メートルに育ち、青い実が風に揺れていた。
ホオズキは南米原産、ナス科の野菜で、生食用の旬は8月中旬ごろから。収穫は10月下旬まで続き、規格外の実はジャムやバター、焼き菓子、ケーキ類、プリンなどに加工している。
2人は「農地は現世代だけでなく、未来(を生きる)世代に託すもの」と考え、自然の力で育てる農業を目指す。農薬や化学肥料などに頼らない作物を示す有機JAS認定も受けている。
種は毎年、出来の良いホオズキから自家採取。世代を重ねて栽培し優れた形質を保つ固定種を確保することで、多様性や地域の気候、土壌に適応する力を持ったホオズキの育成と産地化に努めてきた。
一方、単にブランド名を付けて「特産品です」と売ることには複雑な思いも抱えている。「産地」は土地と作物、生産者がいなければ実現しないと考えるからだ。美奈さんは「適した時期、適した土地、適した作物がそろってこそ本当の産地では」と問いかける。
先行きに懸念がないわけではない。ここ数年の暑さは、冷涼な気候に適したホオズキには酷暑だ。「いろいろ工夫してはいるが、栽培条件としては悪くなっている」。雄也さんは困惑の表情を見せながらも、「なりわいとしての農業を成立させ、後に続く人のことも考えていかなければ」と未来を見据える。
■メモ 食用ホオズキ
▽結農実ワークスの住所は茨城県高萩市上君田1030
▽商品はネット販売。申し込みは結農実WORKSホームページ(https://yunomi-works.com)で。その他問い合わせも同HP問い合わせフォームから。
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