《旬もの》桃(茨城・城里町)



■省力樹形技術で新産地へ
いかに農業県茨城といえども、生産品目の多少や濃淡、好適不適はある。それは当たり前と言えば当たり前の話ではあるが、気候風土や歴史によるところが大である。
桃の場合、生産量は多い方から順に山梨、福島、長野、山形、和歌山の5県で全国シェアの8割を占め、茨城は「その他」産地となっている。上位県を見ると、割と幅広い地域で生産できる作物と分かる。福島でできるなら茨城でも作れるはず、と考えるのは自然な流れと言えるだろう。
農業ベンチャー企業、日本農業の子会社「ジャパンフルーツ」は2024年、茨城県城里町錫高野に日本初の省力樹形「V字仕立て(高樹高)」の桃、梨のほ場を設け、生産に乗り出している。V字仕立ては木を1列に植え、実が成る枝を高くそろえることで、枝切りや収穫などの省力化を図って生産性を上げ、新しい産地形成に取り組む手法だ。
日本農業国内農業部の岩瀬俊さん(34)は、城里を選んだ理由を「まとまった農地があり、果樹を育てる気候、風土が豊か。町も人も事業に前向きに協力してくれた」と語る。
防除や草刈りなど管理を担当する同山崎悠貴さん(30)は「体をかがめず収穫などができるので、作業が楽になる」とV字型の利点を解説する。
25年2月には約4.2ヘクタールの遊休農地を活用し、桃、梨の苗木約5900本を新たに定植し、農地面積は約4.7ヘクタール(桃は約2.7ヘクタール)に拡大した。
今季初収穫した約300キロの桃は県内の量販店、温泉施設などへ出荷。地産地消を通して城里の魅力発信も始めた。当面は県内シェアの半数に当たる100トンを目指し、早ければ26年にもアジアを想定した海外輸出を視野に入れる。
気候と土地の知識、経験に頼る部分も大きい農業だけにまだまだ未知数の部分もある。岩瀬さんは「試行錯誤しながら勉強することは多い」としつつ「経験則は大事で必要だが、より組織的で体系的な農業を確立し、パッケージとして提供していきたい」と新産地形成を軸とした事業拡大の展望を語る。
城里産の桃が広く市場に出回る日も近い。
■メモ 桃
果糖が多いブドウ、リンゴ、梨、キウイなどは冷やすと甘みが増すが、桃、柿、バナナの糖分はショ糖が多く、冷やしても甘さは変わらない。桃は常温で保存して追熟させ、食べる前に冷蔵庫で冷やすとおいしく食べられる。
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