《旬もの》常陸牛煌(茨城町)



■さらなる高み、挑み続ける
松阪牛や神戸牛、米沢牛は言うに及ばず、日本全国には300を超すブランド牛がある。柔らかな肉質と豊かな風味を持ちつつ、さっぱりとした味わいの「常陸牛」も関東の銘柄牛の一翼を担う。日本食肉格付協会が定める全国共通の「格付け等級」に基づき、「B4」以上に格付けされた肉のみがその名を冠することを許される。
茨城県茨城町で黒毛和牛を生産する橋本畜産社長の橋本武二さん(71)は、県内一の常陸牛生産量を誇る。橋本さんの牛は96%が常陸牛。牛と向き合い30年、自他共に認める専門家だ。
安全で高品質の常陸牛を「より多くの消費者に届けるべく、常に他より先に飼料や肥育環境の改善、疾病対策などに取り組んできた」と橋本さん。そのスペシャリストがさらなる高みを目指して挑んできたのが高級牛肉の中の最高級「常陸牛煌」(きらめき)だ。
その基準は▽茨城生まれ茨城育ち▽月齢30カ月以上▽最高ランクのA等級のみ▽オレイン酸55%以上▽小ザシ指数110以上-の全てをクリアして初めて煌となる。
和牛は肥育技術の向上が進み、銘柄牛の差異は年々縮まりつつある。そこで県などは脂肪の質に着目。風味や口溶けに関わるオレイン酸、霜降りのきめ細かさを示す小ザシ(霜降り)を数値化して「おいしさ」の新たな基準を付け加えた。小ザシ指数をブランド牛の認定基準に採用するのは全国で初めてだ。
とはいえ県内140人の生産者が昨年、出荷した常陸牛は約1万1900頭。うち煌と認定できたのは199頭、率にして1.6%。煌づくりの困難さ、ハードルの高さを示す。
それでも橋本さんは良質な牛肉を生産するため、全国各地の競りで血統や繁殖農家の特徴などから有望な牛を見極め、良質な子牛の確保を怠らない。
一方で常陸牛のおいしさ、生産の苦労と喜びを一番知るだけに橋本さんは「目先の利益追求はしてこなかったし、これからもしない」ときっぱり。「水、空気、飼料、畜舎内環境を整え、牛が気持ちよく育つ環境こそが、最高のうまみを生む」。その信念に揺るぎはない。
■メモ 常陸牛煌
問い合わせは▽茨城県常陸牛振興協会 茨城県茨城町下土師1950の1。(電)029(292)8364へ。
購入できる店は▽トキワフーズ 茨城県茨城町小幡850の2。(電)029(291)1129▽藤井商店 守谷市野木崎1822。(電)0297(48)6061
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