《旬もの》ブドウ 常陸青龍(茨城・常陸太田市)



■甘みさっぱり「緑の巨峰」
夏から秋にかけて旬を迎えるブドウ。茨城県北の常陸太田市は阿武隈山地の南端に位置し、水はけの良い丘陵地はカルシウムやミネラルを含む土壌を擁する。巨峰を中心にシャインマスカットなど欧州系ブドウの生産が盛んだ。
同市の常陸太田ぶどう部会は約50年の歴史を誇り、会員は観光ブドウ園を営む。同部会長の本多孝文さん(59)は「この辺は地形的にも土質的にも葉物や根菜向きではない。気候、土壌、地形などの自然条件に適した作物を考えた末の結果ではないか」とブドウ産地の成り立ちを適地適作の観点から解説する。
「常陸青龍」は同部会の主力品種の一つ。マスカットのような黄緑色で、少ない酸味と高い糖度で飽きのこないさっぱりとした甘みと味わいが特長だ。「『緑色の巨峰』と呼ぶ人も」(本多部会長)いるという。産地と品種を守るため、旧常陸太田の生産農家会員だけが栽培しており、会員直売所でしか購入できないオリジナル品種だ。
会員農園の一つ「本多巨峰園」(同市増井町)ではビニールハウスのような屋根に覆われたブドウ畑に常陸青龍、巨峰、シャインマスカットなど30種類を栽培。隣接する直売所で販売する。
ビニールハウスのように屋根がある「雨よけ栽培」は部会員の多くが導入している。ブドウの木が雨に当たらず、病気を防ぎやすいという。「農薬を減らせて、ぬれずにブドウ狩りできる利点もある」と3代目の本多技研さん(64)。常陸青龍は技研さんの祖父、勇吉さんが巨峰の自然交雑種の種を発芽させた苗(実生(みしょう))から育て上げ、技研さんが品種登録へ道を開いた。
同園を兄弟で切り盛りする雅樹さん(39)と竜馬さん(31)は「巨峰やシャインマスカットばかりではスーパーと変わらない。ここへ来ればいろいろ食べ比べられて、好みも見つけられるから」と多品種生産の理由を説明してくれた。
気になるのはここ数年の暑さだが、「収穫時期が早まっているがマスカット系は比較的暑さに強い。今年の出来は例年以上に良く、お客さんの反応も上々」と技研さん。シーズンも終盤、ブドウ好きは常陸太田へ急げ。
■メモ 常陸青龍
オリジナル品種「常陸青龍」は、JA常陸の常陸太田ぶどう部会のうち、旧常陸太田市内の会員農園のみが栽培。購入は直売所で。各園の開園状況、営業時間、在庫品種などは同市の果樹園検索アプリ「KAJUAL」で見られる。
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2025年10月5日(日)