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《旬もの》赤ネギ(茨城・城里町)

赤ネギを栽培する安齋明美さん。手前はピンク色の「原種」=城里町上圷
赤ネギを栽培する安齋明美さん。手前はピンク色の「原種」=城里町上圷
苗もほんのりと赤く色づいている
苗もほんのりと赤く色づいている
「Akemi Farm」のシールが目印
「Akemi Farm」のシールが目印


■伝統受け継ぎ特産品に

食通で知られた作家、池波正太郎の代表作「鬼平犯科帳」シリーズの中で、主人公の長谷川平蔵はよく飯を食べる。同シリーズの「墨つぼの孫八」では、舌が焼けるような根深(ねぶか)汁、大根の漬物、しょうゆを垂らした生卵を熱い飯へかけて食べた平蔵が、武家らしからぬ口調で「む。うめえな…」と漏らし、その後お代わりをする。

根深とは関東の白ネギのことで根深汁はネギのみそ汁だ。さて、ネギはネギでも茨城県城里町圷地区でほそぼそと、しかし隠れた名産として栽培されてきた在来種の赤ネギだったら平蔵は何と言っただろうか。

「品種の特性や赤紫色の固定化を目指した選抜は行われてきたが、交雑などの品種改良はされず、明治初期から自家採種で作られてきた伝統野菜です」。同地区の赤ネギの来歴をそう説明するのは、10アールを赤ネギ生産に充てる同町の生産者、安齋明美さん(60)。

那珂川沿いの同地は度々水害に見舞われた歴史を持つが、「洪水は豊かな土壌ももたらしてくれたようです」と恩恵も話す。見た目の鮮やかさや生食の辛みと風味、火を通した後の甘み、柔らかく葉まで食べられるなどの特徴がある。鍋で食べる際は「他の食材に火が通った後、最後に入れる。一緒だと煮すぎちゃいますから」と言い添えた。

NPO法人日本スローフード協会の伝統を守る食材プロジェクト「味の箱船」に「県内で唯一認定された作物でもあるんです」との説明に、来歴を知ればなお、深い味わいが堪能できると感じた。

栽培は3月中旬の採種に始まり、9~10月に種まき。翌年4~5月にかけて定植を行う。収穫は10月下旬から翌年1月ごろまで。「栽培期間が長いし、大半が手作業なので規模拡大や生産コストを下げることは容易ではない」と夫の一幾さん(56)が少量生産にとどまる理由を話す。さらに生産者のほとんどは60~70代。収穫の大半は縁故販売や採種、自家消費用といわれ、やっと命脈を保つ状況。

とはいえ、連綿と受け継がれてきた赤ネギの伝統を「絶やすわけにはいかないし、幸い町の特産品として売り込む動きもある」と安齋夫妻は希望をつなぐ。

■メモ
▽取り扱いは「道の駅かつら」。入荷は不定期のため確認を。住所は茨城県城里町御前山37
▽(電)029(289)2334 eメール:info@m-katsura.com
▽ネギは新聞紙などに包み室内の温度の低い所か、外の日の当らない場所に立てておくと良い。



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