《旬もの》ブルーベリー(茨城・つくば市)
■甘みと酸味、深い味わい
ブルーベリーといえば、青紫の実が一番に思い浮かぶが、そのまま食することは少ない。ジャムにしたりヨーグルトに入れたりする。しかし摘みたてを口に放り込めば、柔らかい歯応え、さっぱりとした甘み、ほのかな酸味が味わい深い。
四半世紀前までは知る人も少なかった北米原産の果実が、今日広く認知されるに至ったのは、その栽培に取り組み、指導、研究を続けてきた一人の生産者の尽力によるところが大きい。
茨城県つくば市百家の鈴木太美雄さん(82)は長年のブルーベリー普及への取り組みにより、財団法人日本特産農産物協会からブルーベリー生産者の「地域特産物マイスター」に認証されている第一人者。農園経営の一方、指導者、生産者のまとめ役として活躍してきた。「茨城は東京や群馬とともに三大産地の一つ」と誇らしげに話す。
「東京浅草の生まれだが、3歳で母方の実家、群馬県の榛名町(現高崎市)に疎開し、そこでの生活によって自然と農業を覚えた」という。
長じて国立競技場勤めとなった鈴木さんだが、農業への思いが消えることはなかった。知人のつてでつくば市に土地を求めて移住。遠距離通勤の傍ら、開学間もない筑波大学の公開講座で果樹コースを受講。修了記念にブルーベリーの苗木をもらったのが最初の出合い。
このとき栽培を呼びかけ、応じた生産者らで協議会を発足し、鈴木さんが会長に就いた。軽い気持ちで1976年ごろから栽培を始めた鈴木さんだったが、「試行錯誤の連続だった」と振り返る。
ブルーベリーは酸性土壌で水はけが良い土質を好むが乾燥に弱く、かといって過湿にも強くないため、ほ場の管理に注意を要する。「幸い芝の産地だったつくば市の土壌は酸性。ブルーベリーは芝の代替作物としてうってつけだったことも、現在の産地形成に寄与した」と鈴木さん。
品種は大きく早生(わせ)のハイブッシュ系と晩生のラビットアイ系に分けられる。鈴木さんは両者を組み合わせて栽培し、5月から8月まで、収穫、出荷の長期化を図る。「アメリカにもない品種を生み出したい」と意気盛んだ。
■メモ ブルーベリー
▽茨城県つくば市内のブルーベリー農園一覧、問い合わせはホームページ「つくばブルーベリー協議会」(http://298blueberry.com/)へ。
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