台風19号 常陸太田、久慈川堤防決壊 「何もかも失った」泥だらけ、住民苦渋:茨城新聞

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2019年10月18日(金)
台風19号 常陸太田、久慈川堤防決壊 「何もかも失った」泥だらけ、住民苦渋


【写真説明】
久慈川からあふれた水が押し寄せ、決壊した浅川の堤防。濁流は近くの民家も浸食した=17日午後、常陸太田市松栄町、鹿嶋栄寿撮影



台風19号で広範囲が水に漬かり、400棟以上が浸水した常陸太田市。久慈川の堤防が上流部で決壊した影響で、同市松栄町が市内で最も大きな被害を受けた。多くの住宅が泥だらけになり、支流の浅川でも堤防の2カ所が決壊した。里川周辺も水があふれるなどした。「もうここには住みたくない」。住民は苦渋の表情を浮かべた。

「何もかもおしまいだ」。浅川の堤防が決壊した同市松栄町。決壊現場のすぐ近くに住む片岡かほるさん(80)は諦め顔で語る。

約30メートルにわたって堤防がえぐり取られた。片岡さんの理容店兼住宅は正面玄関の下まで土が削られ、土台のコンクリートや配管がむき出しになっている。

台風が襲来した12日、片岡さんは水戸市内の親戚宅に避難していた。14日に戻ると、自宅と堤防は変わり果てた無残な姿に。「まさかこんなことになっているとは。80年生きてきて、初めて」

理容店の再開や自宅の再建は「考えられる状況じゃない」と下を向く。「また水が来たら大変。おっかない」と表情を曇らせる。

決壊現場には17日午後も重機が入り、応急的な復旧工事が行われた。作業の様子を見詰めながら片岡さんは話した。「小さい家でいいから、新しく住めればね。台所とトイレ、お風呂、寝る場所さえあれば…」

「(田や畑が)川のようになって、濁流が押し寄せてきた」。同町の安豊さん(65)は13日午前8時ごろの様子を振り返る。家族4人で住む自宅は床上浸水した。家財道具は全て水に漬かり、運び出した。

先祖代々、この地で生きてきた。久慈川と浅川に挟まれ、水の行き場がない地域だが、安さんの敷地は周辺より高さがあり、被害に遭ったことはなかった。

妻は「もうここには住みたくない」と話す。東日本大震災でも2棟に分かれる自宅は全半壊。修理して住んでいた。周辺でもこうした家屋は少なくない。「ようやく復旧したのに、また水害。ダブルパンチだ」。安さんはうんざりした表情を浮かべる。

現在は城里町にある娘の家に身を寄せるが、「災害支援住宅があれば申し込みたい。その後のことはゆっくり考える」。

里川が流れる同市西河内下町。れんが造りの旧町屋変電所の近くに住む建具店経営、綿引信行さん(70)は17日も自宅の後片付けに追われた。60年ほど暮らす住宅は約1メートルの床上浸水。家の中も隣接する物置も泥だらけになった。届いたばかりの新穀はほとんどが水に漬かった。

「もし寝ていたら死んじゃったな」

台風19号が接近した12日午後7時ごろ、近所の人からすぐ近くの里川の水かさが増しているとの連絡を受け、高台にある旧河内小に避難した。深夜になって様子をうかがうと、自宅周辺が茶色い水で覆われているのが見えた。

妻と母親が亡くなり1人暮らし。親戚や仕事仲間が連日駆け付けてくれた。今は水戸市内の娘の家から通う。住み慣れたこの家にはもう住めない。日が暮れると涙が出てくる。

「家の中にあったものは全滅。何もかもなくなった」。大切にしていたCDを洗いながら、つぶやいた。(川崎勉、小原瑛平)




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