《連載:AI いばらきの未来図》第1部 効率化(3)火災、水害を自動検知 24時間休まず安全監視

茨城県大洗町消防本部(同町磯浜町)に立つ高さ16メートルの訓練棟。最上部に設置したカメラが市街地を一望し、その映像を人工知能(AI)が分析し、火災を自動検知する。
2月10日午前10時10分ごろ、同本部内モニター画面に西方向から白い煙が上がる様子が映し出された。「ピー」と警報音が鳴り、映像の外枠が赤く光る。
「火災かもしれない」。モニターを監視していた同町消防署通信指令係の亀山優人さん(24)は同僚と画面を確認した。119番通報はないが、3人の先輩隊員と現場へ急行した。煙は自宅で野焼きしていた住民によるもので、消火を確認して事なきを得た。
映像から発生場所が分かるため、消火栓の位置や消防車両が通る道路の幅員など周辺情報が素早く確認できる。亀山さんは「迅速、かつ効率的な初期消火に当たれる」と利点を話す。
江戸時代に火災を知らせる高い見張り台にちなみ、「火の見櫓(やぐら)AI」と名付けられた。カメラは昨年11月に設置され、1月から本格運用を始めた。
半径800メートルを360度見渡し、24時間撮影する。炎や煙を検知すると、カメラがズームして火災を知らせる。
設置するきっかけの一つは、2021年5月に起きた火災だった。多くの人が寝静まった深夜、空き家から出火したため発見が遅れ、隣接する複数の建物に延焼した。AIを活用することで、火災の早期発見を目指す。
カラスや車のテールランプを黒煙や火災と誤検知することもあった。その都度AIに学習させて精度を高めている。同本部消防長の国井豊町長(59)は「カメラで初期の火災を発見し、いち早く消火することが安心、安全なまちづくりにつながる」と強調した。
AIカメラは、水害対策にも利用されている。
23年6月の大雨で大規模な内水氾濫に見舞われた同県取手市双葉地区。県は同9月から、同地区でAIを備えたカメラで水位監視する実証実験を始めた。
同地区の南北の排水路などにカメラを設置。事前に設定した水位への到達をAIが判断すると県や市の防災担当職員に通知する。
AIによる監視カメラは水位計が不要なため電柱などに設置しやすく、低コストという利点もある。
実証実験は同9~11月と24年5~7月に行われ、当初は誤検知も多かったが、学習を重ねることで精度が高まり、水位の正確な判定が可能になった。
有用性が確認されたとして、カメラは5月から市が運用を始める。同市安全安心対策課の真田幸彦課長補佐(54)は「水位の上昇を早期に把握でき、排水作業などの対策や住民への注意喚起が迅速にできる」と強調する。
県情報システム課の稲垣健一課長補佐(46)は「内水氾濫が起きる可能性のあるほかの自治体にも広めたい」と話した。
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