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【AI いばらきの未来図】 (第3部 共生(4)) 《連載:AI いばらきの未来図》第3部 共生(4) 電力需要 急増備える

熱電変換素子を使って、温度差で電気が起こる様子を実演する茨城大の小峰啓史准教授=日立市中成沢町
熱電変換素子を使って、温度差で電気が起こる様子を実演する茨城大の小峰啓史准教授=日立市中成沢町


■発電や省エネ 素子期待

プロペラと導線でつながった小型の部品を、容器の中の熱湯に浸す。その部品の上に、保冷剤で冷やした金属片を載せる。すると、プロペラが勢いよく回り出す。

部品は「熱電変換素子」と呼ばれ、温度差によって生じた電圧から電気を取り出す。

「温度差が大きければ大きいほど、発電量は大きい」

回るプロペラを手に、茨城大グリーンデバイス教育研究センターの副センター長、小峰啓史(たかし)准教授(53)が解説する。

人工知能(AI)の普及に伴って電力需要が急増するとの見方が広がっている。小峰さんは「AIはデータを保持するのに電力を使い、計算するのにもっと電力を使う」と、電力確保の重要性を指摘する。

温度差を電気に変える熱電変換の技術を生かせば、工場や車の排気熱などから発電が可能だ。小峰さんが有力な熱源の一つに挙げるのが液化天然ガス(LNG)。LNGの貯蔵施設では、冷却された液体状のLNGに海水をかけて気体に戻す。その際に生じる温度差は約180度に上ることから、膨大な電力が生み出せると期待できる。


エネルギーなくしてAIは存在しない-。国際エネルギー機関(IEA)は、4月に公表したエネルギーとAIに関する報告書で、こう指摘した。

AIが扱うデータ量が増え、その保管・処理を担うデータセンターの建設が各地で進む。データセンターでは、生成AIに欠かせない画像処理装置(GPU)を搭載したサーバーの設置が加速している。GPUは膨大なデータを高速で処理できる半面、消費電力が高い傾向にある。

IEAは報告書の中で、データセンターの電力消費量が2030年までに現状の2倍を超える約945テラワット時に達するとの見通しを示している。これは、現在の日本の総電力消費量をわずかに上回る規模という。

NPO法人「日本データセンター協会」(東京)によると、国内のデータセンターは、把握する限りで少なくとも350棟以上ある。オフィスビルの一角などを利用した小規模なデータセンターを含めると、その数は数千カ所に上る。


電力需要の急増に備えるには、小峰さんは「電気を得る方法と、使わない方法の両方を考え続けないといけない」と語る。

これまで熱電変換の研究に加え、情報処理の省エネ化に取り組んできた。その省エネ化の鍵を握るのが、磁石の性質を利用した記憶素子「次世代磁気メモリー」だ。

従来の記憶素子は0と1の2進法で情報を処理し、電力を供給し続ける必要があった。一方で、次世代磁気メモリーは、電子が持つ磁石の性質を用いて情報処理を行うため、消費電力を大幅に減らせるのが特徴だ。

「AIに電気を使わないメモリーを介してあげれば、そこでの電力消費はどんどん減らせる」

熱電変換と省エネ情報処理の「二刀流」によって、AI時代の電力確保につなげる。



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