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《連載:AI いばらきの未来図 プロローグ》プロローグ(中) タクシー運行 効率化地域の足、利便性高まる

AI配車システムを使ったデマンドタクシーが依頼者の元へ到着=1月28日、古河市下大野
AI配車システムを使ったデマンドタクシーが依頼者の元へ到着=1月28日、古河市下大野


茨城県古河市が運行する乗り合いタクシー「愛・あい号」。タクシーの運転席脇のタブレット端末画面には、利用客の目的地までのルートが表示されている。

同市上辺見の山田みち子さん(81)は週3回ほど、インターネットや電話で出発地や目的地、希望の出発日時などを登録して予約し、利用している。「出かける時間に自宅まで来てもらい、目的地まで行ける。ありがたい」と語る。

約10年前に運転免許を返納した。市内の公民館で卓球、フォークダンスを楽しむ際や通院など「移動には欠かせない」。端末画面に表示された山田さんのルートは人工知能(AI)が設定する。予約状況に応じてAIが効率的にタクシーを配車し、最適なルートを導き出す。



2008年7月に運行が始まった愛・あい号は22年度まで総和、三和両地区限定で運行だった。23年度にAIを導入。古河地区を含めた市内全域に拡大し、計10台が走る。24年度からは定時制を廃止し、出発か到着の希望時間の指定ができるようになり、電話に加えてネット予約も可能にした。

市交通防犯課などによると、AI導入以前は地元の交通事情に詳しいベテラン職員が1、2分ほどかけてルートを作成していたが、AIは数秒でこなす。ただ、AIが示すルートは時間帯によって渋滞や工事中の箇所も。運転手の判断で迂回(うかい)したり、近道を通るなどして補い、臨機応変に対応している。

同課の斉藤恭嗣課長(57)は、AIはまだ進化の過渡期にあるとしており、「AIと人間の力を掛け合わせながら利便性を高めることで、市民が利用しやすくなれば」と期待する。



鉄道やバスなどの路線や運行本数の減少を背景に、各自治体は住民の日常生活の移動手段として乗り合いタクシーを位置付ける。県によると、県内で23年度までに乗り合いタクシーにAIシステムを活用する自治体は古河市を含め、常陸大宮や大子など9市町。本年度は筑西、常総、東海3市村が導入した。

大子町は町民だけでなく町外からの観光客への利用も促す。同町は1年間の実証実験をへて、21年10月から「AI乗合タクシーたくまる」の運行を開始。乗降場所は路線バスや町民無料バスのバス停を中心に370カ所設定し、うち37カ所は「観光おすすめ乗降場所」として案内する。

利用者は専用サイトから予約する。AI運行システムが予約に応じてルートを設定し、目的地に送り届ける。町まちづくり課では、車がなくても観光地が周遊できて低料金、かつ乗り継ぎなしで移動できる交通手段と位置付ける。JR水郡線の利用促進への狙いもある。

AIシステム活用による効率化は、移動手段の新たな選択肢を増やした。同課の担当者は「町内外の人が動くことで、町全体の活性化につなげたい」と話す。



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