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《連載:AI いばらきの未来図》プロローグ(上) 付加価値生む変革者 シラウオの鮮度、精密に

シラウオの鮮度をAIで判定する装置のモニター=行方市玉造甲
シラウオの鮮度をAIで判定する装置のモニター=行方市玉造甲


「霞ケ浦のダイヤモンド」とも呼ばれるシラウオ。ベテラン漁師に代わって品質を見極める「目利き役」が、その判定結果を数秒でモニターに映し出す。

人工知能(AI)を使った「AIシラウオ」のブランド化を進める、茨城県行方市とDX化支援のコンサルタント会社「ima(あいま)」(東京)。湖畔に新拠点「AIシラウオブランドセンター」を立ち上げ、AI画像診断による鮮度の判定に取り組む。

手早く水揚げされたシラウオを箱型の装置に入れると、AIがカメラで撮影した画像を基に4段階で評価する。鮮度の基準を明確にし、高い品質を訴求する。従来よりも高値で売り、漁師の収入増や持続性ある漁業につなげる。

2021年度にプロジェクトが始まり、間もなく4年。これまで高級飲食店や量販店などに販路を広げ、従来価格の5倍の高値を付けた実績がある。

「商品名にAIと出すだけでキャッチー。注目を集められるので、それだけで効果がある」。市ブランド戦略課の花形将史係長(43)は胸を張る。


「第3次ブーム」ともいわれる近年のAI。その飛躍的な進歩を可能にしたのが、大量のデータを自ら学習する「ディープラーニング(深層学習)」だ。「AIシラウオ」も、深層学習による分類モデルを採用している。

2500枚を超えるシラウオの画像データに、漁師が鮮度を格付けしたものを学習。「身の締まり」や「目の輝き」などを精密に判定する仕組みを整えた上、水揚げされたシラウオの評価を重ねて精度を向上させてきた。

imaディレクターの内田康隆さん(41)は「ほかの活動にも広がっていけばいい」と期待を寄せる。

ブランド化の先には、未利用魚や農産品への活用といった可能性が広がる。「今までの取り組みでは気付かなかった潜在的な価値をAIが創出してくれる」と目を輝かせる。


深層学習が進展する中、その技術を生かした「生成AI」も日常生活に浸透し始めた。文章や画像、動画に音声-。その成果物は多岐にわたる。

三菱総合研究所(東京)は昨年8月、生成AIを活用した「付加価値」試算のリポートを公表した。この付加価値は「生産性向上の便益」を指す。

現状では全国の製造業や卸売・小売業、医療・福祉など5産業で2.4兆円。ただ信頼性や利用環境が確保されれば、将来的には21.3兆円に達すると見込んだ。

社会を一変させる存在「ゲームチェンジャー」とも評される今のAI。変革をもたらすデジタル技術に、熱い視線が注がれている。

デジタル技術が生活に浸透し、あらゆる場面で活用が進む。人口減少が進む中で、AIを暮らしの中でどう活用し、共存していくのか。生活への応用、課題を探る。



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