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【AI いばらきの未来図】 (第3部 共生(3)) 《連載:AI いばらきの未来図》第3部 共生(3) 自分なりの一手 検討 囲碁・将棋の実戦に反映

囲碁でAIとの対局を振り返る谷本宏樹さん(右)=水戸市千波町の水戸葵陵高
囲碁でAIとの対局を振り返る谷本宏樹さん(右)=水戸市千波町の水戸葵陵高


「うまく入られた」-。囲碁でAI(人工知能)との対局を振り返る「検討」を盤上で行っていた水戸葵陵高1年の谷本宏樹さん(15)。ミスのないAIの正確な手に、ため息をついた。

棋譜の解析など、囲碁や将棋の世界で、AIの活用が進んでいる。茨城県内の若い棋客たちも解析技術を活用し、対局などを通じて自分なりの一手を見つけようとしている。

谷本さんは今月開かれた全国高等学校囲碁選手権大会県予選の男子個人で優勝し、8月の本選出場を控える。戦略を考える上で、アプリ「囲碁の師匠」などAIを活用するツールを使って、棋譜の検討や研究に取り組む。

局面で、どのような手で攻めたり返したりすれば有利になるか。さまざまなパターンを試し、学んだ知識を実戦に落とし込む。

ただAIが示す手は先を読みすぎ、どんな意図があってそこに打つのか読み取れない時もある。使いこなすには相当な碁力が必要と感じる。それだけにAIの判断に頼り過ぎないことが大切といい、「一つ一つ打つ手を自分なりに考えていく」。

将棋でも活用は浸透している。6月開かれた全国高等学校将棋竜王戦の県大会A級で優勝した県立竜ケ崎一高1年、鬼沢陸さん(15)。8月に本選出場を控えるが、AI活用アプリ「将棋ウォーズ」で対戦や検討などを繰り返す。

対AI戦は「見えにくい良い手を早い段階で指してくる」。指される手が正確なために、「王将」「玉将」の周りが薄くなりがちな癖もある。ある程度守りを固めたいという心理が反映される対人戦とは異なり、あまり見られない形になることがあるという。

鬼沢さんには、AIが示した手よりも自分が指した手の方が戦局を有利にできた経験がある。その印象的な出来事はうれしさや驚きから今でも覚えている。AIにも性能の幅がある。日々進化しているが、「AIよりも良い手を指せるよう自分なりの一手を見つけたい」。

プロからアマチュアまで幅広い層にAIの活用が広がる。日本将棋連盟県支部連合会の美馬和夫幹事長によると、プロ棋士では、AIを用いた研究によって、事前に局面を深く理解して対戦相手より優位に立ったりする。アマチュアでは、序中盤で時間を使わずに済むように、得意戦法の理解を深めておくことなどに活用されている。

スマートフォンなどで手軽にAIを活用できる環境がある中、美馬幹事長は「人と人との対局中に不適切に利用される懸念も出てきている」と指摘する。一方で「AIの示す手は人には理解が難しいことも多く、情報をうのみにしないことも大切」と話す。

「AIは絶対ではなく、あくまでツールとして参考程度にとどめた方がいい。戦略や局面を自分なりに考える想像力こそが強さにつながる」



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