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【AI いばらきの未来図】 (第3部 共生(2)) 《連載:AI いばらきの未来図》第3部 共生(2) 実社会との調和追究 人間の感性、学習過程に

書籍に囲まれながら、人間の感性を理解するAI開発に取り組む筑波大の伊藤寛祥助教=つくば市春日
書籍に囲まれながら、人間の感性を理解するAI開発に取り組む筑波大の伊藤寛祥助教=つくば市春日


人工知能(AI)アルゴリズム(計算手法)などの書籍とともに、心理学や経済学、ゲーム理論といった人間関係や社会現象に関する専門書がずらりと並ぶ。

筑波大人工知能科学センターの伊藤寛祥助教(32)=図書館情報メディア系=の研究室。AIが暮らしの中で広く使われるようになる中、人間の感性や価値観などを学習過程に取り込み、実社会に調和するAIの開発を目指している。

「人間のためのAIというのが基本的な考え方。人に寄り添うためには、人間の感性や価値観は無視できない」。ビッグデータや数学的手法を活用し、人間と機械が協調して問題解決に取り組む技術の研究に取り組む。

人の心の動きや人間関係は、粒子同士が結び付いて起きる化学反応とも似ており、時には物理学の専門書を参考にしながらアルゴリズムの開発に当たる。

ソーシャルネットワークの将来を予測する研究では、交流サイト(SNS)上での興味関心や友人関係の相互作用に着目。より高い精度で予測できる数理モデルを考案し、新しいサービスへの反響予測など、マーケティングの活用につなげる。

重視するのは、全てをAIなどの自動化システムに任せるのではなく、機械学習に人間が介入する「ヒューマンインザループ」と呼ばれる考え方だ。

伊藤助教は「今のAIは人間の意図や感性を察する部分はまだ発展途上の段階」と指摘する。AIが得意な部分は任せつつ、「大事な意思決定の判断に人が介在することで、人がより快適と感じるAIにしていくことができる」。

研究室ではデータサイエンスや数理的な手法を駆使しながら、人が好ましいと感じるアイテムを効率的に獲得するためのアルゴリズムなどを研究している。

音楽生成アプリの研究開発では、ユーザーが二択で曲を選択していくとAIが好みの差分を学習し、その都度、自動でテンポや明るさなどを修正。コード進行の音楽で、こうした「対話」を15回ほど繰り返すと、ユーザーに合った曲が出来上がる。

応用技術の研究にも力を入れている。

ゼネコンとの共同研究では数万件に上る特許出願状況のデータを解析し、建築業界内で今後盛り上がりを見せそうな技術分野やニッチ市場を見出す予測モデルを開発。経営の意思決定をサポートする。

AIを使ってテータベースを整理する研究では、図書館での書誌データの誤りや重複を調査する際、AIが抽出を間違った部分は人間が修正して矛盾点を学習させ、性能の向上につなげる。

「チャットGPT」に代表される生成AIが急速に普及する中、「どう共存していくかが重要なテーマ」と伊藤助教。「人間がやりたいことにフィットするようAIをチューニングしていくべきだ」



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