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【AI いばらきの未来図】 (第2部 創造(4)) 《連載:AI いばらきの未来図》第2部 創造(4) 学びの場 使い方追求 対話型で問題解決糸口

AIを搭載した端末を使いながら気象の仕組みを学ぶ生徒たち=2月14日、水戸市文京
AIを搭載した端末を使いながら気象の仕組みを学ぶ生徒たち=2月14日、水戸市文京


「反論をいかに乗り越えるかが大事。そこはしっかり自分で考えよう」。2月、茨城県水戸市文京の茨城大付属中で開かれた公開授業。国語科の中村麻里那教諭(36)が2年生に呼びかけた。

同校は昨年度から本格的に生成AI(人工知能)を授業に取り入れ始めた。

授業のテーマに据えたのは「思考力を鍛えるチャットGPT(対話型AI)の使い方」。生徒が、自分とは違う立場の意見も踏まえた「鉄壁の主張」となる文章づくりに挑んだ。お題は「学校制服の必要性」。まず自身の立場を決め、「確かに~」に続く反論部分を生成AIに導いてもらい、その後の「しかし~」で自らの主張の根拠を述べる構成だ。

中村教諭の呼びかけに応じ、生徒らは生成AIを搭載した端末に異なる立場の名前を入力し、反論とその理由を質問。AIが出す考えを踏まえ、自らの主張を練り直した。

発表で生徒らは「確かに制服は平等性を確保できる」「団結力にもつながる」とした上で、「でも私服なら個性を出せる」「制服代は高い」などと紹介し議論を深めた。

同大教育学部副学部長の毛利靖教授(63)は、教育現場での生成AI活用は「問題発見解決学習をサポートする一つのツール」と話す。

思考力の低下などを懸念する声もあるが、授業では、答えを教えてもらうのではなく、問題を解くための助言や着目点を得るために使うことが中心だ。

文部科学省は昨年末、学校での生成AIの取り扱いについて暫定版だったガイドラインを改訂。英会話の相手や議論を深めるといった活用例、注意点をまとめた。

指針は、リスクや懸念を踏まえた対策を講じた上で利用を検討すべきだとしており、同校でも本格導入前に教員向け研修会や生徒向けのガイダンスを実施した。

同校で理科を担当する諸岡史哉教諭(37)も気象の仕組みや天気の変化を学ぶ授業で生成AIを活用した。

日本海側と太平洋側で天候が違ったのはなぜか-。実際の気象データを材料に、風向きや地形、気温など「どの気象要素に着目すれば説明できるか仮説を立ててほしい」と呼びかけ、「考えに詰まったらAIに聞いてもいい」と一言添えた。

諸岡教諭は、天候と気象条件の因果関係に着目できる助言を生成AIが送るよう、あらかじめ指示文(プロンプト)を入力。仮説設定が苦手な生徒もいる中で「必要なデータを探したり観察したりする際の視点を見つける手助けとしてAIを活用した」。

急速に発展、拡大する生成AIとどう付き合うか。試行錯誤は始まったばかり。毛利教授は「一人一人に合わせた個別最適な学びの重要ツールになる。そのためのより良い使い方を追求していく」と強調する。



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