【AI いばらきの未来図】 (第1部 効率化(4)) 《連載:AI いばらきの未来図》第1部 効率化(4) 昼寝見守り自動記録 保育に導入、活用は途上

「子どもたちの日々の成長を見守ることが役目であり、やりがいでもある」
茨城県牛久市にある幼保連携型認定こども園「フレンド幼稚園」の保育士、中村愛さん(50)は、乳幼児の昼寝中の体の向きなどが表示されたタブレットを見ながら、小さな変化に気を配る。
同園では人工知能(AI)による顔認識機能などを備えたカメラ型午睡チェックシステム「ベビモニ」を導入した。天井に取り付けたカメラが部屋全体の園児を認識し、寝相などの情報がタブレットに送られる。
言葉で表現できない小さな子どもにとって、周囲にいる大人の見守りは欠かせない。昼寝中の事故防止や体調の急変にいち早く気付くためにも、顔色や呼吸、熱感などを確認する午睡チェックが重要となる。人の目とAIによる二重の確認に、中村さんは「AIに頼り過ぎず、自分の目と合わせて使うことが大事」と語る。
ベビモニは見守り機能に加え、記録を自動的にデータとして残す。機器を導入したことで、これまで保育士らが手書きで行っていた午睡チェックの業務が効率化された。島尻妙子理事長は「時代に即し、地域と働く職員の双方から求められる園にしていきたい」と語る。
ベビモニを開発したEMC Healthcare(東京)によると、保育施設での死亡事故の多くが睡眠中に起きている。昼寝の見守り機器の需要は高い。
見守り機器は現在、センサーを搭載したマット式やデバイスを子どもの服に取り付ける形など、さまざまな商品がそろう。カメラ式のベビモニはAIを活用しているため、うつぶせ寝や顔の向きなどの分析精度が高い。100%ではないが、誤検知や誤アラートを可能な限り防げる特徴があるという。
昼寝の記録表は自動で作成されるため、多様な業務に追われる保育士の事務作業削減も見込まれる。同社には使用者から「保育士とベビモニ、ダブルで見守りができて安心」「寝姿勢の記入作業がなくなり、楽になったと感じた」といった声が寄せられた。
AIの活用が進む中で、課題もある。常磐短大幼児教育保育学科の鈴木範之准教授によると、保育士が毎月作成する指導案である「月案」の作成に、AIの提案を取り入れる事例も出ている。ただ、AI任せではなく、最終的に組み立てるのは保育士らだ。AIの関連機器を使いこなせる職員が園にいない場合も多く、茨城県での普及は途上の段階にあるという。
少子化で入園児が減少する中で、「選ばれる園」を目指し、写真や動画提供などサービス充実に努める園も増えた。「保育士業務の幅も広がっている」
効率化とともに、AIや情報通信技術(ICT)導入に伴う新たな業務にどう対応するか。「各園が目的を明確にした上で、実情に合った機器を取り入れた方が効果的な業務効率化につながる」と指摘する。
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