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《食いこ》天野屋(茨城・常総市)

炭火でせんべいを焼く天野屋代表の鈴木義人さん、左手にはせんべいを平らに押さえるこて=常総市水海道宝町
炭火でせんべいを焼く天野屋代表の鈴木義人さん、左手にはせんべいを平らに押さえるこて=常総市水海道宝町
生地(左)を焼き上げ、しょうゆを塗った「あとひきせんべい」
生地(左)を焼き上げ、しょうゆを塗った「あとひきせんべい」
天日干しするあとひきせんべいの生地(天野屋提供)
天日干しするあとひきせんべいの生地(天野屋提供)
天野屋せんべい店
天野屋せんべい店


■後引く手焼きせんべい

さて、せんべいである。「あのしょうゆ味がちょっと」という人はいるとは思う。が、「食べられない」人は多分少ない-と断じてしまおう。少数意見の尊重に問題は残るにせよ。

漫画家、エッセイストの東海林さだおは随筆で「煎餅(せんべい)は一回に何枚食べられるものだろうか」と問いかけた上で「全国平均で三枚、これがニッポンの常識」と力説していたが、どうだろうか。

茨城県常総市水海道宝町。関東鉄道常総線水海道駅前から商店街通りを進むと、一画に昭和レトロな構えの店。名物せんべいの多い同市にあって、天野屋の「あとひきせんべい」はその名の通りの人気ぶりだ。

大正年間の創業。伝統の味を手焼きで守るのは代表の鈴木義人さん(52)と妻のかおりさん(52)。父親の跡を継いだ鈴木さんは「ぱりぱりとした食感、香ばしさ、しょうゆの香りと味わい、米の味と歯応え、最後にほのかな甘みが来る」を目指し、自ら作るせんべいを語る。

製粉したうるち米を蒸して練り、ついて薄い餅状に延ばし、丸く打ち抜いた生地を天日で干す。乾き具合は生地を軽く打ち合わせた音で分かる。

炭をおこした1メートル四方の火鉢の前に腰を据えた鈴木さんは、差し渡した鉄棒の上に生地7、8枚を2列に並べ、火箸でひっきりなしに裏返す。これを繰り返すうち、白い生地はこんがりときつね色に。この間1枚7~8分。30分ほどで30枚を焼き上げた。

火の通りは色で判断する。「乾燥具合、火力、気温の違いで焼き上がる時間や味が変わる。午前と午後で(味が)変わる」こともあるほどだ。冬はまだしも夏は「温度計が表示不能になるほど暑い。休憩しながらでないと熱中症の危険もある」過酷な作業だ。実際、具合が悪くなって救急搬送されたこともある。

焼き上げた後、しょうゆ塗りは機械だが「はけで塗り足したり、のばしたりして味を調える」と鈴木さん。

「全国平均3枚」と東海林さだおは書いたが、焼き上がったばかりのあとひきせんべいを食べると、3枚以上は行けそうな気がした。ちなみに東海林は「煎餅食べ放題の店」で30分間に14枚食べ、あごが痛くなったと書いている。

■お出かけ情報
▽茨城県常総市水海道宝町2764
▽(電)0297(22)0411
▽営業時間は午前9時半~午後6時
▽せんべいはしょうゆ味1種類、1枚136円(税込み)。箱入りは10枚1410円~50枚6800円まで(箱代含む)



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