《食いこ》マガリヤマ旨味工房(茨城・行方市)
■まき窯で焼く本格派ピザ
れんがを積み上げた丸みのあるまき窯をのぞき込み、茨城県行方市の「マガリヤマ旨味工房」代表の曲山渉さん(65)は真剣な表情で火加減を確認する。長い棒の先が大きなへらのようになった道具を窯に差し込むと、焼き上がったピザをすくってテーブルへ。耳や生地にこんがりと焦げ目が付き、具材のチーズがぐつぐつと音を立てている。
定番のマルゲリータやミックスをはじめ、てりやき、ねぎじゃこ、えびマヨ、めんたいマヨ、サラミ。どれも自家製の野菜や具材たっぷりで、まき窯で焼くナポリ風ピザならではの香ばしさと、もっちりとした食感が特徴だ。
妻の幸枝さん(63)と2人で切り盛りしてきた。ソースを作ったり、メニューを考えたりするのは幸枝さん、生地をこねて具材を並べ、焼くのは渉さん。近隣で伐採した木をまきに300~400度で焼き上げる。出来たてを提供し、「おいしいと言って食べてもらうことが一番」と話す。
夫婦とも農業とは無縁のサラリーマンだった。渉さんが60歳の定年を迎え、サツマイモ栽培に乗り出すと同時に、幸枝さんも退職。新しいことを始めてみようと、第二の人生を共に開拓してきた。サツマイモ畑で「紅はるか」1.6ヘクタールを生産し、干し芋や焼き芋に加工して販売する。
ピザ屋を始めたきっかけは、立ち寄った店で食べたピザに物足りなさを感じた幸枝さんが、「だったら、おいしいピザを作ればいい」と思い立ったことだった。生地に使う小麦粉の選定や作り方、焼き方、材料の組み合わせなど、全くの素人からのスタートだった。
手先の器用な渉さんが小屋を建て、まき窯を作った。自信を持って人に振る舞える味を求めて試行錯誤。イタリア産の小麦粉を使った生地に合う具材を探し、現在のメニューにたどり着いた。全て注文を受けてから焼き、テイクアウトが基本だ。
夫婦で営む「畑の中のピザ屋さん」は近隣住民だけでなく、県外にもファンがおり、親しまれる。コロナ禍や物価高騰など「思い描いた通りにはいかないが充実している。挑戦してよかった」と渉さん。忙しく過ごしながらも、幸枝さんとの日々の発見や出会いを楽しんでいる。
■お出かけ情報
▽茨城県行方市小貫715の69
▽営業時間は午前10時~午後6時
▽定休は月曜(祝日の場合は翌火曜)
▽(電)0291(35)1184
▽電話で予約し、1日限定20食
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