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《食いこ》越田水産(茨城・神栖市)

伝統の製法を守り続けている「越田水産」。笑顔でサバをおろす越田英之会長(手前右)と竜平社長(同左)たち=神栖市波崎
伝統の製法を守り続けている「越田水産」。笑顔でサバをおろす越田英之会長(手前右)と竜平社長(同左)たち=神栖市波崎
サバのエキスが溶け込んだ漬け汁に浸す作業
サバのエキスが溶け込んだ漬け汁に浸す作業
手おろしだからこそ、背骨しか残らない
手おろしだからこそ、背骨しか残らない


■熟成漬け汁「枯らす」干物

塩とサバのエキスが主成分の熟成漬け汁を使い、伝統製法で干物を作り続ける。無添加、絶妙な塩加減のサバの文化干しは脂が乗って臭みがなく、多くのファンを持つ。

同社のサバ加工は全て手作業。まず頭を落としたサバの背骨に沿って一息に出刃を滑らせ三枚におろす。「機械おろしは背骨に身が残る。手おろしで残るのは背骨のみ。食べられる部分の歩留まりがいい」と3代目の越田英之会長(60)は手作業にこだわる理由を説明する。

次に内臓を除いて水洗いし、木枠に並べ、漬け汁の底にたまった塩をかき混ぜて身を漬ける-と言うと単純だが、実はこの漬け汁がすごい。

利根川を挟み、対岸はもう千葉県銚子市という同所周辺の干物工場では、漬け汁を使い続けて干物を作る文化があった。塩水におろした魚を漬けては塩を足し、魚のうま味いっぱいの漬け汁に熟成していく。かつて地元ではそれを「枯らす」と言い習わした。

枯らすほどにおいしい干物ができるとされ、実際そうだった。しかし時代は移り、安さと効率性を求める事業者が増える中、枯らした漬け汁で干物を作るのは今や越田水産のみ。「加熱処理も薬品による消毒もせず、水も加えない。純粋に塩と魚の水分のみで漬け続けるのは、今やうちだけでは」と越田会長は胸を張る。おろした身に点々と残る骨の髄が塩水に溶け込み、熟成されて53年目だ。

同社ではサバを繰り返し漬けることで、漬け汁の温度を極力上げないよう注意を払って熟成してきた。相当な塩辛さを覚悟して漬け汁をなめると、なるほど塩辛くはあるが嫌みはなく、臭みもない。

研究機関の分析では、漬け汁には48種類もの酵母菌や乳酸菌類がすみ着いて生態系を形成。菌の酵素がサバのタンパク質を分解し、うま味成分に変えているとみられ、唯一無二の味わいを生み出す源になっている。

漬け汁に20~30分浸した後は、微生物の活動が持続するよう表面を軽く乾かす程度に干し、出荷先に合わせて包装するか真空パックして冷凍する。越田会長は「自分が食べたくないものは作らない。おいしいサバを食べてくれる消費者を裏切らない干物を作り続ける」と笑顔で言い切る。

■お出かけ情報
▽茨城県神栖市波崎8233の9。同所で直売もするが、電話もしくはウェブサイトからの注文が便利。
▽営業時間は午前9時~午後3時
▽定休日は日曜
▽(電)0479(44)0473
▽ホームページアドレスはhttp://kosidasuisan.com/



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