《食いこ》釜平(茨城・常陸太田市)
■伝統継ぐソースカツ丼
茨城県常陸太田市のJR常陸太田駅から徒歩約12分、鯨ケ丘商店街・西町通り沿いにソースカツ丼の店「釜平」がある。今年で創業97年目を迎える老舗で、カツ丼には創業以来継ぎ足してきた秘伝のソースを使う。店主の塩原政靖さん(68)は「なるべく真面目に正直に変わらぬ味を作っていきたい」と意気込みを語った。
同店でソースカツ丼を出すことになった理由については、よく分かっていない。政靖さんの祖父が都内で教わってきたという話もあるらしいが、真偽のほどは不明。ただし、常陸太田の街中ではこのソースカツ丼が一般的で、カツ丼といえば、卵とじではなくソースの方を指すほどに浸透しているという。
調理方法もオリジナルで、揚げたてのカツを、沸騰したソースで一瞬煮る。カツを煮ることで豚の脂とうまみがソースに溶け込む。さらに、このソースは創業以来、継ぎ足して使用している。継ぎ足すことでソースの角が取れ、まろやかになる。
この秘伝のたれとご飯の相性は抜群で、客から「ご飯の量が多くて、残すかと思ったけど、たれが合うから完食できた」との感想を聞くという。
たれのベースは中濃ソースで、独自のブレンドを行い、甘辛くあっさりした味にしている。ソースメーカーの廃業に伴い、現在使用しているソースは3社目。創業当時の味になるよう、工夫しながら味の調整を続けている。
ソース以外もこだわっており、豚肉は国産、米は常陸太田産のコシヒカリを使用。さらに、みそ汁に使うみそと、サラダに使うマヨネーズ、漬物は自家製となっている。
同店は政靖さんと妻の幸子さん(64)、叔母の福田早夜子さん(83)とその夫義さん(87)の4人で営む。政靖さんは3代目店主。22歳の時から同店で働いている。
政靖さんは「昔来た客から、『味が変わっていないね』と言われることが一番うれしい」と話す。伝統の味を継承していると感じるからだ。
ただし、伝統にあぐらをかいているだけではない。客の要望を踏まえて、ソースイカ丼やミニソースカツ丼などの新商品を開発し、新たな顧客の獲得にも努めてきた。「今後も、良い食材を使って、なるべく手作りでやっていきたい」と抱負を語った。
■お出かけ情報
▽茨城県常陸太田市西三町2129の2
▽営業時間は午前11時~午後2時、同5~6時
▽定休日は日曜
▽(電)0294(73)0063
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